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大谷光真著『朝には紅顔ありて』角川書店、2003年(1200円(税別))

 浄土真宗の教えについて、いまの私の生活と結びつけて、わかりやすく書いた本が読みたい。しかも、ただわかりやすいだけではなくて、浄土真宗の教えをしっかりとふまえたもので、なおかつ味わい深い本が読みたい。−−こんなむずかしい願いに応えられる本として、いまもっともおススメしたいのが、本書、『朝(あした)には紅顔(こうがん)ありて』です。

 著者は、浄土真宗本願寺派のご門主、西本願寺のご住職です。けれども、僭越な言い方でたいへん恐縮ですが、ご門主が書かれた本だからという理由でおススメするわけではありません(^^); ともかくそのすぐれた内容からして、ぜひともどなたにも読んでいただきたいと思い、おススメする次第です。この本の著者が深い教養と誠実なお人柄を備えた方であることは、読む進むうちにおのずと明らかになるのではないかと思います。

 本書の特徴の一つに、読みやすさということを挙げることが出来るかと思います。一つ一つのお話は、多くても数ページにまとめられていますから、たとえば、本を開いてみて、まず目にとまったところから読み始めることができるように配慮されています。しかし、あらためて始めから読みなおしてみますと、この本は、私たちが日々の生活の中で感じる、怒り、欲望、むなしさ、さびしさ、などを取り上げながら、次第に仏教的な、浄土真宗的なものの見方や生き方などを説き進めるように構成されていることがわかります。

しかし、やさしく説いてある中に、時として、はっと気づかされるような言葉があって、それがこの本の魅力の一つなのだろうと思われます。

 本の内容を逐一ご紹介するわけにもまいりませんので、ここでは、少し、一つ一つのお話につけられた小見出しのいくつかを、挙げてみましょう。

・あなたもまた、「生かされている」いのちにほかありません
・打算や物事への執著のない生き方を忘れてはいませんか?
・親が子を選べないように、子も親を選べません
・生きていて役に立たない人などいないのです
・むなしさを生むのは、単調な日々ではなく、凝り固まったこころです
・誰もがいずれは老いていく。それもまた、人間のつとめなのです
・信仰とは、神仏にすがることではありません
・他力とは、他人をあてにすることではないのです
・なぜ、人を殺してはいけないのでしょうか
・亡き人をいつも近くに感じるためには
・いのちのことを考えるのに、早すぎる年齢も遅すぎる年齢もありません
・信心は、仏さまからいただくものです
・万物すべてはつながっています。それを「縁起」といいます

 信仰とは神仏にすがるような生き方を指すものではないし、また、浄土真宗の他力の教えとは、決して他人をあてにすることではない。けれども、あたかも深い森のなかを歩くのに、星が目印となるように、私たちが忙しく日常生活を送るうえで、いつも呼びかけてくださる阿弥陀さまの願いのはたらきが大きなささえとなることを、著者は、やさしく、ていねいに説き示して下さっています。

 また、浄土真宗は、仏さまの願いを聞くことによって開かれ、転ぜられてゆくことを説く教えであるということが出来るかと思いますが、この「聞く」ということについて、著者は次のように書いておられます。

自分の欲望を満たしたい一心で神仏に祈っておられる方は、自分のお願い事のことで頭がいっぱいで、外からの声、すなわち仏さまのお声が聞こえません。仏さまがよびかけてくださっているお声を聞くためには、心を澄ましてふだん聞こえてこない音を聞こうとすることが大切なのです。それにより、仏さまが私たちにかけてくださる願いに気づくことができ、世界が開かれていくのです。このことを、浄土真宗では「聴聞(ちょうもん)」といいます。(p.110)

 仏さまに私の願いを聞いてもらうのではなく、仏さまという「私ならざるもの」から私に向けられた願いの声を聞こうとするとき、私の閉ざされた世界は開かれていくのです。

 本書の魅力をお伝えするために、まだまだ引用させていただきたい文章があるのですが、(実際、わたくしは法事の折などで、本書の内容を今もいくつかご紹介させていただいているのですが、)ここでは、これ以上に冗長になるのを恐れて、割愛させていただきたく思います。

 同書は、今年四月に発刊されて以来、ベストセラーをつづけており、いまでも全国の書店で容易に手に入れることが出来ます。その点では、すでにお読みの方も多いことと思いますが、あらためて、まだ読まれていない方に、ぜひとも読まれんことをおススメしたく思います。

(2003/10/24)

バックナンバー

『朝には紅顔ありて』

『セブン・イヤーズ・イン・チベット』

『わたしの浄土真宗』

『うちのお寺は浄土真宗』

『人生の目的』



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